ニューヨーク大学海外基礎配属留学体験記

和歌山県立医科大学医学部3年

中澤彩乃

 私は8月と9月の二か月間アメリカ合衆国のニューヨーク州にあるニューヨーク大学で研究をさせていただき、主にイオンチャネルに関する研究を行ってきました。ニューヨークでの生活についてお話しする前に研究内容について少し説明したいと思います。

 私が参加させて頂いた研究室では、ATP依存性カリウムチャネルに関する実験を主に行っており、その中で、NK細胞に機能的なATP依存性カリウムチャネルが発現しているのかを調べることで、免疫系に対する役割を調べる研究を行っていました。具体的な手技としては、IHCや、染色液を用いた蛍光測定などを行っていました。大学の規模が大きく、様々な研究室と共同で研究を行っている分野もあり、今までには見たことがない多くの機器を目にする事ができ、私の研究内容以外のミーティングに参加し、他のラボメンバーが進めている研究についても勉強させて頂きました。

 また、研究の手技よりも研究内容についての理解を深めることや、様々な専門的な知識が重要であることを教えて頂き、その上でセミナー等にも聴きに行く機会を与えて頂き、とても貴重な経験となりました。実験については、なかなかうまくいかなかったり、実験内容やプロトコールを変更しなければならないことも多く、他の論文を参考にして実験を進めていくこともありましたが、自分自身でプロトコールを書くところから始まり、研究がどのように進んでいくのかの過程の一部を経験することができたと思います。

 他にも、研究に参加させていただくのに、ニューヨーク大学のIDを取得しなければならなかったのですが、日本とアメリカでは、必要な予防接種が異なっており、日本では打っていなかったワクチンの接種がIDの取得に必要であったために、申請に難航するなどのトラブルもありましたが、事情を説明し、無事にIDを取得することが出来ました。ただ、日本では、予防接種などに関して外国に遅れている部分があることを痛感した出来事でした。

 平日は朝9時半頃から遅い日では夜9時ごろまで研究室に滞在し、休日にはラボのメンバーに観光に連れて行って頂いたりして充実した生活をおくっていました。また、8月に誕生日を迎えたため、歓迎会を兼ねて誕生日を祝っていただいたことは良い思い出になりました。ラボには日本人や日本語を話せる人がおらず、全て英語で会話しなければならなかったことが英語力の向上につながったと思います。研究室にはアメリカ以外にもアジア圏など様々な出身地の方がいて、中には訛りの強い英語もあり、聞いたことのない研究用語が多くあったため、始めの頃は聞き取ることが難しい時期もありました。また、もともとあまり積極的にコミュニケーションを取る方ではなかったために、自分の考えを伝えることに苦労したことも多くありました。毎週木曜日に行われるラボミーティングでは、その週に自分が行った実験結果の説明をプレゼン方式で行ったり、それについての議論を行っていましたが、何度も発表をするうちに、徐々に自分の研究について説明することが出来るようになり、自分自身にとってとても成長できる機会となりました。

 同じラボの技術者のNatとは年も近く、彼女は大学を卒業後、技術者として働きながら、アメリカの医学部を受験することを目指していたため、日本とアメリカの医療制度に関して多くの議論を行いました。また、研究だけでなく、医療についての知識の深さにはとても驚き、自分自身の勉強不足を感じるとともに、帰国してからは、一層勉学に励もうという良い刺激を受けました。研究についてだけでなく、ニューヨークでの生活に慣れるまでのサポートなどもしていただき、とても心強かったです。

 ニューヨークの街については、とにかく多様な人種?背景の人がいると感じました。また、街中で話しかけられて雑談をすることも多く、民族性の違いを感じましたし、人の温かさを感じることが出来ました。一方で、地下鉄などでは治安の悪い路線があったり、大麻が合法であるため薬物中毒の人を見かけたことで、日本の治安の良さや街の綺麗さは比べ物にならないと日本の良さを痛感しました。円安の影響もあり、物価は日本の3倍程度ととても高かった一方、美術館や博物館は入場料が定められておらず、気軽に芸術に触れることができ、日本ではなかなか見ることが出来ない作品を多く見ることができました。特にメトロポリタン美術館では、絵画だけでなく、彫刻や装飾品の展示などが多くあり、深く感銘を受けました。ニューヨークは移民の街であり、歴史は日本に比べてもあまり深くないと感じましたが、その分世界中の様々な文化が入り混じった街であり、2か月間の間だけでも多くの文化や違いを見ることができたと思います。

 海外基礎配属でこのような貴重な経験をさせていただくことができ、研究や、英語力の向上だけでなく、様々な価値観に触れ多くのことを学ぶことができました。2か月間の留学を通して得ることが出来たことや、成長できたことを生かしてこれから精進していきたいと思います。最後になりましたが、ニューヨーク大学に留学する機会を与えて下さった、西谷先生をはじめとする薬理学教室の先生方、ニューヨーク大学のDr.William A Coetzee, 研究をサポートして下さったNatalie Samper, Song Soomin, 留学のサポートをして下さった改正先生、国際交流センターの林さん、その他留学に関わって下さった全ての方に深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

ニューヨーク大学 Langone Health  Statue of Liberty

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