体験談:コンケン大学救急科海外臨床実習留学体験記

コンケン大学救急科 海外臨床実習留学体験記

医学部6年 平田拓士

私は2023年4月3日から28日まで、タイにあるコンケン大学の救急科で海外臨床実習留学をさせていただきました。コンケン大学での留学を選んだ理由は、半年ほど前に同大学からの留学生が和医大に来ていて、彼らとお話しする中でコンケン大学の学生のレベルの高さを知り、興味を持ったからです。また、救急科での実習を選択した理由は、幅広い疾患に対応できる環境で総合的な医学知識を身につけたいと考えたからです。

私が留学するにあたり、3つの目標を立てました。1つ目は「救急科で様々な症例に出会い、疾患に対する知識理解を深めること」です。救急科での実習は朝8時から夕方4時過ぎまででしたが、日夜問わず様々な患者が訪れ常に混雑していました。心不全、脳梗塞、尿路感染症、Covid-19など、日本でも一般的な疾患に加えて、虫刺されによるアナフィラキシーや、デング熱疑いの患者など、南国であるタイならではの症例にも遭遇しました。また、動脈血ガス測定、腰椎穿刺、尿道カテーテル留置、経鼻胃管挿入など、日本では研修医が行うような多くの手技を経験させていただき、実践的なスキルを身につけることができました。私はタイ語を全く喋れないので患者さんと直接お話しすることは難しかったですが、タイの学生は患者さんに対して問診や身体診察、エコー検査などを行っており、医学教育の水準の高さに驚きました。火曜と木曜の午前中には救急科の先生方同士のカンファレンスや勉強会に参加させていただきました。映し出されるスライドはほとんどがタイ語で書かれていましたが、先生方が私のために英語で解説してくださったので、なんとか理解することができました。最終週には私も症例発表をする機会をいただきました。1件だけでしたが私にとっては初めての英語での発表であり、大変有意義な体験となりました。救急科での実習を通して私自身が大きく成長できたと思います。

2つ目は「私の英語がどこまで通用し、何が私に足りないのかを見出すこと」です。今回の留学はこれまでに私が努力して身に付けてきた日常英会話や医学英語のスキルをアウトプットする絶好の機会と考えて臨みました。タイの人々の母語はタイ語であるにも関わらず、ほとんど全ての医師や看護師の方々は英語を流暢に喋ることができるので、日常英会話レベルであれば円滑にコミュニケーションを取ることができたと思います。また、疾患名などの専門用語は全て英語であり、勉強してきた医学英語の知識がそのまま活きました。一方で、先生方との議論においては私の英語力はまだ十分ではなく、先生方のおっしゃっていることが分からなくなることや、私の伝えたいことがうまく言えないことも多くありました。病院以外の場面においても、英語力の無さを痛感する場面が少なくなく、特にトラブルを円満に解決できるほどの英語力がないことに気が付き愕然としました。今回の留学を通じて、私の英語はまだ不十分であることを明確に知ることができたので、今後も日常英会話と医学英語の勉強を継続していきたいと思います。

3つ目は、「異なる文化を理解し、様々な人と交流を図ること」です。私はこれまで海外旅行にも行ったことがなく、今回の留学は初めての海外体験であり、日本とは全く違う環境に身を置くことにとても不安を感じていました。しかし、タイで出会った方々はとても優しく、彼らと出会ったことで予想外の素晴らしい体験が待っていました。まず、コンケンに到着した翌日、国際交流センターの担当者のオーさんにコンケンの観光名所へ連れて行っていただきました。タイでは仏教が生活に根付いているようで、至る所に特徴的な寺院がありました。その寺院の建物や中にある仏像?仏具は、芸術的な価値だけでなく、信仰の象徴としての重要な役割を果たしていることを知りました。また、救急科の実習の終了時刻になると先生方にカフェやレストランへ連れて行っていただくなどのおもてなしを受け、すぐに打ち解けることができました。幸いなことにタイ料理はとても美味しくて口に合ったため、毎日の食事を楽しみに過ごすことができました。さらに、4月中旬にソンクラーンという祝日(タイの旧正月)があり実習は休みでした。道行く人々同士で水を掛け合うという行事があったのですが、炎天下の中で行う水の掛け合いはとても涼しく、非常に楽しかったです。日本とは違うタイの文化に圧倒されつつも、気が付けばまたタイに来たいと思えるほどになりました。初めての海外での異文化体験は、とても価値あるものになったと思います。

本体験記を読んでくださっている方は、コンケン大学での留学に少しでも興味のある方だと思いますので、コンケンでの生活についても少しご紹介しておきたいと思います。物価はとても安く、水は500mLのボトルで30円前後、食事は1食300円くらいで食べることができました。薬や日用品も日本では考えられないくらいの低価格で購入できました。私の泊まったホテルは1か月で5万円弱と比較的安く、広くて清潔で、近くにコンビニエンスストアやコインランドリーもあり、生活には全く困りませんでした。病院内には昼食に利用できる食堂が豊富にあり、メニューもとても充実していて、一通りのタイ料理を食べることができました。さらに病院内には24時間使える自習室、コンビニエンスストアやカフェ、通貨を両替できる銀行までありました。夜はホテルの近くにあるナイトマーケットや屋台で食べることが多かったです。辛い料理が多かったですが、どれもすべて美味しかったです。一度も食中毒になることはなく、食事に困ることはありませんでした。また、少しコンケンからは離れていますがバンコクやアユタヤなどの観光地が多く揃っていることもタイの魅力だと思います。最高気温が40℃程度と非常に暑いという点だけは大変でしたが、1か月でタイでの生活を十分に満喫することができました。

最後に、コンケン大学ではオーさんや救急科の先生方をはじめ多くの方々に大変お世話になりました。また、和歌山県立医科大学国際交流センターの神人先生や林さんにも大変お世話になり感謝しております。この場を借りて御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。タイでの貴重なこの経験を、医師としての将来に活かしていきたいと思います。

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